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ホテル→賃貸 移行する際のメリット・デメリットと移行前に出来る事

最終更新日 : 2021年5月18日

長引くコロナ不況で観光客の増加が見込めない為に、ホテルを賃貸に転用する動きが加速しています。大手のホテルでも小規模なアパートホテルでもどうにかしようと試行錯誤しています。そこで本日は、ホテルを賃貸に移行する場合のメリットとデメリットについて、過去に不動産屋に勤務経験のある著者が解説します!合わせて、移行する前に出来る事も後半でご紹介!

ホテルから賃貸への移行例

ホテルを賃貸にした具体例をいくつかご紹介します。

帝国ホテル「30泊36万円」も話題!「住むホテル」「多拠点サブスク」で宿泊需要は戻るか?

ホテルでキッチンも洗濯機も無い為、客室フロアを改装して共用の洗濯乾燥機や電子レンジを設置したりすることを発表していたりと試行錯誤が伺えます。

2月1日から3-7月分の予約受付を行なったところ、全99室があっという間に売り切れたと言われているそうです。

厳密には賃貸という訳ではありませんが、近いものがあるでしょう。

住まいのようにホテルに宿泊できる新サービス「Mr.KINJO RENTAL HOTEL」について

Mr. KINJOさんも一部賃貸に用途変更してこの危機を乗り切ろうとしています。

他にも完全に賃貸に移行したアパートホテルは多いのでは無いでしょうか。

賃貸移行のメリット

一時期増えたアパートメントホテルならそもそもの造りがアパートなので移行もしやすいのでえ選択肢の一つでしょう。

ではどのようなメリットがあるのかご紹介します。

【安定性】

ホテルから賃貸に移行する最大のメリットはなんといってもこの安定性でしょう。一度入ってしまえば長く入居してもらえるのでコロナが落ち着くまでどうにかしのげる可能性もあります。

【新しい需要の取り込み】

これまでには存在しなかった、テレワークやワーケーション等の需要が見込めます。沖縄等は、寒い冬の間しばらくワーケーションをしようという需要があるのでは無いかと推測出来ますね。コロナで観光自粛が求められる間はテレワークが推奨されますので、ちょうど良い補完関係にあるのではないでしょうか。

【人件費の削減】

賃貸にしてしまえばホテルフロントや清掃員の確保も不要となる為、人件費の削減になるでしょう。

【固定費削減】

賃貸になればシーツ代やアメニティも不要となりますし、光熱費も借り手が支払います。これが全くかからなくなるのは大きなメリットです。

【OTA手数料の削減】

ホテル事業の場合、予約毎にOTAへの手数料が10〜15%かかります。賃貸になるとこれも不要となります。

但し、不動産会社への管理手数料が毎月、家賃の5%程度かかるのは覚えておいて下さい。

賃貸移行のデメリット

メリットだけではありません。デメリットも多くあります。

【退去問題】

もし将来的にホテル事業に戻るという前提だと、タイミングが来た時点で退去してもらう必要がありますが、一度賃貸で貸してしまうと、退去してもらうのが大変です。かといって数ヶ月限定で定期賃貸にしてしまうと入居が決まりにくくなる可能性もある為、難しい所です。

【タイミングを逃す】

賃貸人の退去との兼ね合いで、観光が戻ってくるタイミングでホテルに戻せ無い可能性があります。長く居座られてしまうと、機会損失になる可能性もありますね。

【立地問題】

そもそもの立地が悪いと、借り手が見つからない可能性もあります。賃貸にしようとしてホテルの募集を停止したにも関わらず賃貸の借り手も見つからず、収益ゼロ なんて事だけは避けたいものです。

【駐車場問題】

賃貸で貸し出すのであれば、駐車場が必要になるでしょう。モノレール沿線でない限りは、戸数分の駐車場が必須です。沖縄で駐車場も無いのに無計画に賃貸にしてしまうと借り手が付きにくい為、気をつけて下さい。

駐車場が必要なのはホテルでも同じですが、ホテルは毎日満室という訳ではありませんし、乗り合わせで移動する方もいる為、戸数分の駐車スペースが無くてもどうにかなる場合があります。

【別途費用問題】

賃貸にすると、賃貸借契約や火災保険費用等、ホテルでは不要な様々な費用がかかります。それらを足すと高額になる為に、借り手視点からは賃貸で借りるメリットが無い可能性もあります。

【キッチン・洗濯機問題】

ホテルでキッチン・洗濯機が付いていない場合は要注意。誰が好んで毎回コインランドリーに行きたいと思いますか? キッチンと洗濯機の無いホテルは長期ゲストの取り込みは厳しいでしょう。

【ハイブリッド型の問題】

全て賃貸にするのは難しいので一部だけを賃貸にするハイブリッド型もありますが、借り手に敬遠される場合があります。同じ建物に毎回違うゲストが出入りするとなると賃貸の借り手が嫌がる可能性がある為です。

ざっと思いつくだけでもこれだけのデメリットがあります。天秤にかけてご判断下さい。

ホテル vs 賃貸 いくらで借りられるのかを試算

ゲストも馬鹿ではありませんので、長期で滞在する場合にはホテルか賃貸か比較検討するはずです。

そこで、ホテルで借りた場合と賃貸で借りた場合がいくらになるのかを試算してみます。

那覇市内で1ヶ月借りる場合、具体的には3月1日〜30泊で検索すると、最安は下記でした。なんと10万円切り!

では、賃貸ではどうでしょうか。話題のMr. KINJOさんの月額38,000円で実際にかかる総額を出すと

  • 家賃 38,000円
  • 管理費 1,000円
  • 仲介手数料 38,000円
  • 保証会社 15,000円
  • 火災保険 15,000円
  • 退去時クリーニング代 25,000円
  • 光熱費 約10,000円
  • 違約金 38,000円
  • 合計 約180,000円

合計18万円でした。

1ヶ月だと割高になる為、1年でも計算してみました。

項目単価数量合計
家賃¥38,00012¥456,000
管理費¥1,00012¥12,000
仲介手数料¥38,0001¥38,000
保証会社¥15,0001¥15,000
火災保険¥15,0001¥15,000
退去時クリーニング代¥25,0001¥25,000
光熱費¥10,00012¥120,000
違約金¥38,0000¥0
合計¥681,000

総額で681,000円、1ヶ月あたり56,750円という計算でホテルよりも大分安くなりますね。

これを元に1ヶ月〜12ヶ月までの費用を一覧にするとこうなります。

期間総額1ヶ月あたり
12ヶ月¥681,000¥56,750
11ヶ月¥632,000¥57,455
10ヶ月¥583,000¥58,300
9ヶ月¥534,000¥59,333
8ヶ月¥485,000¥60,625
7ヶ月¥436,000¥62,286
6ヶ月¥387,000¥64,500
5ヶ月¥338,000¥67,600
4ヶ月¥289,000¥72,250
3ヶ月¥278,000¥92,667
2ヶ月¥229,000¥114,500
1ヶ月¥180,000¥180,000

光熱費等、概算で出していますが、概ね3ヶ月以上住むのであれば、賃貸の方が安くなる計算です。

これを参考に賃貸市場で戦っていけるのか、そうではないのかをご判断下さい。

賃貸に移行する前に出来る事

そもそも1ヶ月以上は賃貸借契約が必要で、7日未満は旅館業の取得が必要です。ただし、実際には1ヶ月未満でチェックアウトして再度予約すれば長期で滞在出来てしまいますので、両者の垣根は無くなってきていると言えるでしょう。

そこで賃貸移行前に一度お試し頂きたいのが、下記です。

30連泊割で提供して反応を見る

例えば、様々な固定費や支払い等を含めて月額20万円以下では厳しいというのであれば、そもそもミスキンさんの18万円より高いので賃貸に移行しても難しいでしょう。

その場合は、各種補助金や銀行との支払交渉等を検討する必要があります。

逆に賃貸で月額10万円でもいいというのであれば、ホテル事業として30連泊を10万円=1泊あたり3333円で提供してみて反応を見るのです。全く反応が無ければ、賃貸に移行したとしても契約等でより手間暇がかかる為、賃貸需要は取り込めません。

もし、多くの予約が取り込めるのであれば、賃貸需要を取り込める可能性はある為、賃貸移行を検討してみても良いでしょう。

料金はホテルの立地によって変わる為、一概に最適料金を決める事は出来ませんが、この方法でマーケット需要を見てから賃貸に移行するか、ホテル事業で長期を取り込んでいくのかを判断しても遅くはないのでは無いでしょうか。

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