公開日: 2020年1月10日
最終更新日 : 2021年8月7日
最近流行りの?AIですが、ホテルの値付けにもAIが利用され始めています。ダイナミックプライシング等と呼ばれたりもするITによる自動値付けの事です。これまではホテルの金額というのは、担当者が過去のデータと近隣の状況を踏まえて手動で値付けを行っていたのですが、これをITでやってしまおうという手法です。まだまだ各社手探り状態ではありますが、今後はこの流れは加速してくるものと思われます。
そこで今日は、ホテルを運営されている方がこれからダイナミックプライシングを利用する場合に候補に上がるであろう3社を比較していみたいと思います。
ほぼ2社に集約される
色々調べてみたのですが、日本でホテル運営を行っている場合には、ほぼこの2択になるようです。
①メトロエンジン
②MagicPrice
リサーチ不足の可能性もあるので、他にご存知の方がいれば教えて下さい!
比較一覧表
一覧にした方が分かりやすいのでいきなり一覧表
スマホは横にすると見やすくなります
名称 | メトロエンジン | MagicPrice | |
初期費用 | 100万円 | 30万円 | |
月額基本料金 | 無し | 8万円 | |
月額室数料金 | ¥2,000 / 1室 | 200室以下 ¥200 /室 201室以上 ¥100 /室 | |
接続可能サイトコントローラー | TLリンカーン 手間いらず らく通 | TLリンカーン 手間いらず ねっぱん | |
料金更新 | 自動 | 手動 | |
メリット | 主要国内OTA、海外OTAに繋がるサイトコントローラーと接続が可能 | 主要国内OTA、海外OTAに繋がるサイトコントローラーと接続が可能 | |
デメリット | 初期費用と1室辺り料金が高額で大規模ホテル以外は手を出せない。 | 月額基本料金が高額 | |
主要顧客 | 大規模ホテル | 中規模ホテル |
主に2社になりますが、料金を見てもらえればわかる通り、ホテル規模によって選ぶシステムは絞り込まれそうです。
メトロエンジン
メトロエンジンは完全に大規模施設向け。中小施設が初期費用100万とか払えるか!!(笑)
下記のような機能が実装されています。
●推奨客室単価の算出
●サイトコントローラ・PMS対応
●競合宿泊施設分析データの閲覧
●競合宿泊施設の独自グループ作成
●都道府県・市区町村別分析データの閲覧
安いプランもあるようですが、安いプランだとそもそも推奨価格の算出機能が無い為、AIプライシングのくくりで言うと高い金額になってきます。
MagicPrice (マジックプライス)
マジックプライスは中規模施設向け。専任のレベニューマネージャーを雇う位の金額で導入できそうです。
機能としては下記
●競合販売状況の把握と分析(WEB上の公開情報を元にした推計値)
● 自社販売状況の把握と分析
● 売上シミュレーションに基づく料金ランクの提案
● サイトコントローラー経由での、予約サイト掲載料金の更新
● 施設周辺のイベント情報カレンダー
マジックプライスは最適価格の提案はするけど、料金の更新は自動では無く、更新ボタンを押して始めて更新されるようです。
費用シミュレーション
これから導入して1年間利用した場合の室数ごとの費用もシミュレーションしてみました。
金額は初期費用を含めた12ヶ月間利用した場合の総費用 (当初の計算が誤っていた為、訂正しています)
部屋数 | メトロエンジン | MagicPrice | |
1 | ¥1,024,000 | ¥1,262,400 | |
5 | ¥1,120,000 | ¥1,272,000 | |
10 | ¥1,240,000 | ¥1,284,000 | |
20 | ¥1,480,000 | ¥1,308,000 | |
30 | ¥1,720,000 | ¥1,332,000 | |
50 | ¥2,200,000 | ¥1,380,000 | |
100 | ¥3,400,000 | ¥1,500,000 | |
200 | ¥5,800,000 | ¥1,740,000 | |
300 | ¥8,200,000 | ¥1,980,000 |
初期費用抜きにして純粋な月額費用のみで利用した場合は下記
部屋数 | メトロエンジン | MagicPrice | |
1 | ¥2,000 | ¥80,200 | |
5 | ¥10,000 | ¥81,000 | |
10 | ¥20,000 | ¥82,000 | |
20 | ¥40,000 | ¥84,000 | |
30 | ¥60,000 | ¥86,000 | |
50 | ¥100,000 | ¥90,000 | |
100 | ¥200,000 | ¥100,000 | |
200 | ¥400,000 | ¥120,000 | |
300 | ¥600,000 | ¥140,000 |
メトロエンジンは初期費用と1室当たり料金が高い。室数が多くなると割引があるかもしれませんが、ウェブに記載がなかったのでそのまま2000円/室 で計算しています。
MagicPriceは1室あたり料金は安いのですが、初期費用もそこそこに月額基本料金が高い。
メトロエンジンとMagicPriceの月額料金は45室で逆転します。45室以上ならMagicPriceが安く、45室未満ならメトロエンジンが安くなります。
両者共に、ある程度の規模のホテルでないと手が出せませんが、優秀なレベニューマネージャーを雇うと思えば安いものです。沖縄だと一人雇うと最低月15万円程。優秀な人を雇おうと思えば倍以上になります。その他保険等各費用を換算すると、月数十万円はかかってきます。レベニューマネージャーは退職するリスクもありますが、システムを入れてしまえば安定した収益コントロールが出来ますね。
ご利用はサイトコントローラー経由
どのシステムも単体で利用するのでは無く、サイトコントローラーを経由して料金を調整します。その為、どのサイトコントローラーに接続出来るのかはかなり重要。選ぶ基準にもなるので、一覧表でご確認下さい。同じ一覧表を再掲します。
名称 | メトロエンジン | MagicPrice | |
初期費用 | 100万円 | 30万円 | |
月額基本料金 | 無し | 8万円 | |
月額室数料金 | ¥2,000 / 1室 | 200室以下 ¥200 /室 201室以上 ¥100 /室 | |
接続可能サイトコントローラー | TLリンカーン 手間いらず らく通 | TLリンカーン 手間いらず ねっぱん | |
料金更新 | 自動 | 手動 | |
メリット | 主要国内OTA、海外OTAに繋がるサイトコントローラーと接続が可能 | 主要国内OTA、海外OTAに繋がるサイトコントローラーと接続が可能。 1室あたり費用が安い。 | |
デメリット | 初期費用と1室辺り料金が高額で大規模ホテル以外は手を出せない。 | 月額基本料金が高額 | |
主要顧客 | 大規模ホテル | 中規模ホテル |
サイトコントローラーに関しては下記で各社の特徴を紹介しておりますので、興味ある方はどうぞ。
名前 | ねっぱん | 手間いらず | TLリンカーン | らく通 |
初期費用 | 50,000円 | 50,000円 | 100,000円 | 0円 |
月額料 | 5室以下 5,000円 6室以上 8,000円 | 9,900円~ +月額通信料 | 15,000円〜 | 19,440円 |
特徴 | これまで利用している為、操作手順を新しく覚える必要が無い。たぶん。価格もそこそこ安い。 | シェア高く信頼のおけるシステム | 大手ホテルの多くが利用するほど高機能 その分高額。小規模施設にはハイスペック過ぎる。 | シェアはあまり高く無い。初期費用が安いのが魅力 |
ねっぱん有料になるってよ!どこに乗り換える?競合サイトコントローラーを徹底比較! *ノーショー対策追記有り
注意点
ダイナミックプライシングは便利な機能ではありますが、他にも似たような機能を打ち出しているOTAがあります。
ブッキング・ドットコムでは、RateIntelligenceという機能で、近隣の競合施設を設定する事で競合と比較した料金差異を見る事が出来ます。過去には最適価格を提示する機能も有料で存在していたのですが、利用がなかったのか最近はあまり聞きません。
民泊だとAirbnbの「スマートプライシング」という機能がこれにあたりますね。スマートプライシングはサイトコントローラーに接続すると利用出来ないので、Airbnb一本で販売するのであれば今回ご紹介したAIプライシングシステムを利用するまでもなく無料でAirbnbの機能をご利用下さい。
こんなのがあればいいなという提案
こういったAIプライシングの弱点は、最適価格を割り出す際にマーケットの公開価格を参考にしている点。恐らくAPIでつないで価格をひっぱってきているのでしょう。ただ、OTAによっては非公開価格が全予約の半分を占めるOTAもあります。実勢価格は公開価格から実は10〜20%安い場合も多いのです。そんな中でマーケット価格を参考にしても予約はあまり動かない可能性もありますね。
高い金払ってあまり役に立たなかったら偉いことになるので、こんな機能はどうでしょう?
例えば
●●日前まではスタンダード料金
●●日を切って稼働が●●%以下なら●日(時間)ごとに●●%値引き
●●日を切って稼働が●●%以上なら●日(時間)ごとに●●%値上げ
料金変更後、●時間以内に●件の予約が入った場合は●%値上げ
料金変更後、●時間以内に●件の予約が入らない場合は●%値下げ
最低価格は●●円
値は手動で設定して割引が作動するのは自動。
このような設定を、120日前、90日前、60日前、30日前等で設定しておけば、当月入った時点で何%の予約が埋まっているというのをコントロール出来ます。直前で慌てて投げ売りしなくても済むわけです。
この設定であればAPIでマーケット価格を拾ってくる必要も無く、実際に売れるまで金額を上下させるだけなので比較的安価に開発できそうです。「手間いらず」さんあたりがデフォルトで搭載してくれないですかね?手間いらずさんご連絡お待ちしております(笑)
以上、ホテルのAIによる料金値付けについてまとめてみました。誤っている点や追加して欲しい点等ありましたらお知らせ下さい。修正させて頂きます。
元Booking.com アカウントマネージャー。数百以上の宿泊施設にウェブ販売をアドバイス。アパートメントタイプから、ビジネス・リゾートホテル、グローバルチェーンまで幅広いタイプの宿泊施設の販促をサポート。OTAの裏事情まで熟知したノウハウでホテル・民泊のウェブ集客をお手伝いします。