最終更新日:2026年10月1日
「2名で予約が入っていたのに、清掃に入ったら布団が全部使われていた」「チェックイン後に、廊下を大人数が出入りしていた」――ホテルや民泊を運営していると、一度はこんな経験があるのではないでしょうか。
少ない人数で安く予約して、実際は予約人数より多く泊まる。これがいわゆる「人数詐欺」(人数のごまかし)です。フロントに人がいない無人ホテルや、一棟貸し・大部屋のある宿ほど狙われやすく、宿泊料の取りこぼしだけでなく、清掃・備品の負担や騒音、近隣からの苦情、定員オーバーによる安全面のリスクにまでつながります。
この記事では、ホテル・民泊の運営代行の現場で実際に見てきたケースをもとに、宿側が予約の段階で気づけるサイン、予約の前後でできる予防策、そして発覚したときの確認・請求の手順までをまとめました。
3〜30室の民泊・ホテルを
「しっかり稼ぐ」体制へ
数字を見る余裕がない。
一つでも当てはまるなら読んでください!
- なぜ「高稼働なのに儲からない」のか?
- 陥りがちな「7つの誤解」とその解決法
- 利益を4倍にした「7つの施策」の全体像
- 稼働・単価・粗利・直販を底上げする設計図
「稼ぐ宿の虎の巻」を読む »
人数詐欺とは?ホテルが受ける被害
人数詐欺とは、その名のとおり宿泊人数を偽って安く泊まることです。多くの宿は人数によって料金が変わるため、人数で料金差をつけている大型の客室や一棟貸しの施設ほど起こりやすくなります。
たとえば、次のような料金設定の客室があるとします。
🏨 料金設定の例
- ・1泊の基本料金 50,000円
- ・最大収容人数 10名
- ・4名までは同一料金
- ・5名以上は1名増えるごとに 5,000円を追加
この客室に10名で泊まる場合、正しい料金は50,000円+5,000円×6名=80,000円です。ところが「4名」で予約して50,000円で泊まり、実際には10名で滞在する――これが典型的な人数詐欺です。
| 正しい予約(10名) | 人数詐欺(4名で予約) | |
|---|---|---|
| 支払額 | 80,000円 | 50,000円 |
| 宿の損失 | ― | 30,000円+α |
⚠️ 宿側の損失は宿泊料の差額だけではない
- !人数分のリネン・アメニティの消費と、清掃時間の増加
- !騒音や違法駐車などによる、近隣住民・他の宿泊客からの苦情
- !定員オーバーによる、安全面(避難・消防)のリスク
- !苦情が保健所や行政に届き、営業の継続そのものが危うくなるリスク
ときには最大収容人数を超えて泊まり、夜通し騒いで部屋を汚していくケースもあります。「差額をもらえば済む」話ではないからこそ、予約の段階で気づき、未然に防ぐことが大切です。
ホテルが注意すべき人数詐欺予約の6つのサイン
人数をごまかす悪意のある予約を100%見抜くことはできませんが、予約内容とゲストのアカウント情報から、ある程度は事前に察知できます。運営代行の現場での経験上、次の6つがすべて重なる予約は、9割方クロです。
🔍 人数詐欺を疑うべき予約のサイン
- ☑大きな客室・一棟貸しを、1〜2名などの最少人数で予約している
- ☑週末(金曜・土曜)の1泊だけの予約
- ☑当日・前日の直前予約
- ☑アカウントが最近作られたばかり
- ☑レビューが0件
- ☑プロフィール写真が設定されていない
ひとつずつ、宿側がどこを見ればよいかを解説します。
① 大きな客室を最少人数で予約している
人数詐欺の典型パターンです。1〜2名で泊まるなら、もっと小さくて安い部屋を選ぶのが自然です。それでも大部屋や一棟貸しを最少人数で予約してくるのは、大人数で使うことを前提にしている可能性が高いと考えましょう。
② 週末(金曜・土曜)の1泊だけの予約
パーティー目的の予約に多いパターンです。仲間を集めて「週末に集まって騒ごう」となったときの予約で、観光の拠点ではなく「集まって騒ぐこと」自体が目的なので、1泊だけになりがちです。
③ 当日・前日の直前予約
前日に急にパーティーが決まったケースのほか、当日の夜に「飲み会の二次会をやろう」となって予約が入ることもあります。直前予約そのものは大切な売上ですが、①②と重なっている場合は要注意です。
④ アカウント情報が怪しい(作成直後・レビュー0件・写真なし)
ゲストのアカウント情報にもヒントが隠れています。次の3つに当てはまる場合は「捨てアカウント」の可能性があります。
- ☑アカウントが最近作られたばかり
- ☑レビューが0件
- ☑プロフィール写真が設定されていない
人数詐欺を繰り返して悪いレビューが残ったアカウントを消し、新しいアカウントで予約し直している可能性があります。Airbnbでは、ゲストのプロフィールから次のような情報を確認できます。
アカウント作成時期の例
プロフィール写真が無く、レビューも0件の例
なお、Booking.comなどAirbnb以外の予約サイトでは、ゲストのプロフィール情報はほとんど見えません。その場合は客室の大きさ・人数・曜日・予約のタイミングの組み合わせで判断します。
見るべきは「国籍」ではなく「予約の中身」
沖縄では、基地周辺のエリアで週末にパーティー目的の予約が集中しやすいなど、地域によって傾向が出ることもあります。ただし、国籍だけを理由に宿泊を断ることはできません。旅館業法で宿泊を断れる場合は限られており、判断の材料にすべきなのは国籍ではなく、ここまで紹介した予約内容や行動のサインです。
💡 宿側のポイント
1つのサインだけで「詐欺だ」と決めつけるのは禁物です。複数のサインが重なったときに、人数の再確認やルールの念押しを手厚くするという使い方をしましょう。
人数詐欺を防ぐためにホテル側でできる対策
フロントに人がいない無人ホテルや民泊では、チェックインの場で人数をごまかされても気づけません。だからこそ、予約の前後とチェックインの仕組みで防ぐことが大切です。
① Airbnbは「予約リクエスト制」で受ける
人数詐欺をほぼ確実に避けたいなら、販売をAirbnbに絞り、すべての予約をリクエスト制にする方法があります。リクエスト制なら、ここまで紹介したサインに当てはまる予約を承認しないことで回避できます。Booking.comなど多くの予約サイトは即時予約が基本でリクエスト制にできないため、この方法はAirbnbに限られます。
ただし、リクエスト制は即時予約より成約率が下がるため、予約そのものが減るデメリットがあります。掲載を始めたばかりの宿がこの方法を取ると予約が入らなくなってしまうので、すでにAirbnbから安定して予約が入り、レビューも貯まっている宿向けの方法です。
② 予約確定後に、人数の再確認メッセージを送る
100%とはいかなくても、予約が入った段階で宿泊人数を改めて確認するメッセージを送り、あわせて人数の偽りには厳しく対応する旨を伝えるだけで、人数詐欺の件数は減らせます。
ご予約の宿泊人数を改めてご確認ください。ご予約人数を超えるご宿泊が確認された場合は、規約にもとづき追加料金を請求させていただきます。
サインが重なっている予約には、チェックイン前日にもう一度念押しするなど、メッセージを手厚くするのも効果的です。
③ 予約条件・ハウスルールに「予約者以外の入室不可」を明記する
発覚したときに「聞いていない」と言わせないために、予約サイトの注意事項やハウスルールに、あらかじめ次のように記載しておきます。
予約者以外の方の入室はできません。入室した場合は宿泊者とみなし、別途宿泊料金が発生します。
この一文があるかどうかで、後の請求のしやすさが大きく変わります。追加料金の金額や計算方法も、できるだけ具体的に書いておきましょう。
④ チェックイン時に宿泊者全員の本人確認を行う
旅館業の宿では、宿泊者名簿の作成が義務づけられており、日本に住所のない外国人のゲストはパスポートの写しも保存する必要があります。無人の宿なら、タブレットのチェックイン機で全員分の身分証を撮影する流れにしておくと、人数の確認と証拠の確保を同時にできます。
チェックイン画面で規約への同意を必須にしておく方法は、無人運営の宿の人数偽装対策で詳しく紹介しています。無人チェックインの仕組みづくり全体は小規模ホテルのための「無人チェックイン」完全ガイドも参考にしてください。
⑤ 入口・共用部の防犯カメラで記録を残す
人数詐欺が疑われたとき、最も強い証拠になるのが入口や共用部の防犯カメラの映像です。何人が出入りしたかを後から確認できるだけでなく、カメラがあること自体が抑止力になります。設置は客室内ではなく入口・廊下などの共用部に限り、カメラがあることを館内やハウスルールで案内しておきましょう。
💡 料金設計も見直してみる
人数による料金差が大きいほど、人数を偽る「うまみ」も大きくなります。大型の客室では、基本料金に含める人数を少し増やして1名あたりの追加料金を抑えるなど、偽る動機そのものを小さくするのもひとつの考え方です。
それでも人数詐欺が起きたときのホテルの対応手順
① まずは事実と証拠をそろえる
清掃時の客室の状態(使われた布団・タオルの数、ゴミの量など)を写真に残し、防犯カメラの映像で出入りした人数を確認します。ゲストに連絡する前に、証拠をそろえておくのが鉄則です。
② ゲストに確認する(ただし8割方はとぼけられる)
証拠がそろったらゲストに確認しますが、経験上、8割方はとぼけられます。よくある言い分は次のとおりです。
- 💬「部屋には入ったけど、泊まってはいない」
- 💬「友人が荷物を取りに来ただけ」
- 💬「そんなことはしていない」
ここで効いてくるのが、対策③で記載しておいた「予約者以外が入室した場合は宿泊者とみなす」という一文です。防犯カメラの映像などで事実が確認できたら、規約にもとづいて追加料金を請求します。OTA経由の予約は、各予約サイトの規約やサポート窓口に沿って請求・報告しましょう(Airbnbなら解決センターから請求できます)。
③ 支払われない場合は「詐欺罪にあたる可能性」を伝える
ここまでやっても、半数以上のゲストは無視して支払いません。その場合は、人数を偽って泊まる行為は詐欺罪にあたる可能性があり、実際に逮捕された例もあることを伝えます。
⚖️ 人数を偽った宿泊で逮捕された例
2022年、大阪市のビジネスホテルに「2人で泊まる」と申し込み、実際には5人で宿泊したとして、男性が詐欺の疑いで逮捕されました(のちに起訴猶予)。
人を騙して財産上の利益を得る行為は、刑法246条の詐欺罪(2項詐欺)にあたるとされています。この事件についての法的な解説は、弁護士事務所による解説記事が参考になります。
④ 最終手段は「被害届を出す」と伝える
それでも無視するゲストには、「チェックイン時に撮影した身分証をもとに、警察へ被害届を提出します」と伝えると、ほとんどの方は支払いに応じます。
悪質なゲストには毅然とした態度で臨んでかまいません。ただし、伝え方は感情的にならず、事実と規約にもとづいて淡々と。脅しと受け取られる表現は避け、やり取りはすべて予約サイトのメッセージなど記録が残る形で行いましょう。
よくある質問
人数詐欺とは何ですか?
実際より少ない人数で予約して料金を安く抑え、予約人数を超える大人数で宿泊する行為です。人数によって料金が変わる大型の客室や一棟貸しの施設、フロントに人がいない無人ホテルや民泊で起こりやすい傾向があります。
人数詐欺の予約は、予約の段階で見抜けますか?
100%ではありませんが、ある程度は察知できます。大きな客室を最少人数で予約している、週末の1泊だけ、当日・前日の直前予約、アカウントが作られたばかり、レビューが0件、プロフィール写真が無い――これらが重なる予約は特に注意が必要です。
Booking.comでも予約をリクエスト制にできますか?
Booking.comなど多くの予約サイトは即時予約が基本で、リクエスト制にはできません。リクエスト制で予約を選べるのはAirbnbです。他のサイトでは、人数の再確認メッセージや予約条件への明記、チェックイン時の本人確認で対策します。
人数詐欺が発覚したら、追加料金を請求できますか?
予約条件やハウスルールに「予約者以外が入室した場合は宿泊者とみなし、別途料金が発生する」と明記しておき、防犯カメラの映像などで事実を確認できれば、規約にもとづいて請求できます。OTA経由の予約は、各予約サイトの規約やサポート窓口に沿って手続きしましょう。
人数を偽って宿泊するのは犯罪になりますか?
人数を偽って宿泊料を免れる行為は、刑法246条の詐欺罪にあたる可能性があります。実際に、ホテルに人数を偽って宿泊した人が詐欺の疑いで逮捕された例もあります。
怪しいゲストの国籍を理由に、予約を断ってもいいですか?
国籍だけを理由に宿泊を断ることはできません。旅館業法で宿泊を断れる場合は限られています。国籍ではなく、予約内容や行動のサインをもとに、人数の再確認やルールの念押しで対応しましょう。
まとめ|人数詐欺は「予約時のサイン」と「事前の仕組みづくり」で防ぐ
人数詐欺は、宿泊料の取りこぼしだけでなく、清掃・備品の負担、騒音や近隣トラブル、安全面のリスクにまでつながる、宿にとってやっかいな問題です。
📝 ホテル・民泊がやるべきこと
- ✔大きな客室×最少人数×週末1泊×直前予約の組み合わせに注意する
- ✔Airbnbはゲストのアカウント情報(作成時期・レビュー・写真)も確認する
- ✔安定して予約が入っている宿は、Airbnbのリクエスト制も検討する
- ✔予約確定後に宿泊人数の再確認メッセージを送る
- ✔「予約者以外の入室不可・入室した場合は宿泊者とみなす」を予約条件に明記する
- ✔チェックイン時に全員分の本人確認を行い、共用部の防犯カメラで記録を残す
- ✔発覚したら証拠をそろえ、規約にもとづいて淡々と請求する
人数詐欺を完全になくすことは難しくても、「この宿はちゃんと見ている」と伝わる仕組みをつくれば、狙われにくい宿になります。
弊社マイズインバウンドは、ホテル・民泊の運営代行として、予約の確認やゲスト対応、無人チェックインの仕組みづくりまで一括でサポートしています。「怪しい予約への対応まで手が回らない」「無人運営のトラブルを減らしたい」とお悩みのオーナー様は、お気軽にご相談ください。
📚 あわせて読みたい
3〜30室の民泊・ホテルを
「しっかり稼ぐ」体制へ
数字を見る余裕がない。
一つでも当てはまるなら読んでください!
- なぜ「高稼働なのに儲からない」のか?
- 陥りがちな「7つの誤解」とその解決法
- 利益を4倍にした「7つの施策」の全体像
- 稼働・単価・粗利・直販を底上げする設計図
「稼ぐ宿の虎の巻」を読む »
Booking.com 那覇オフィス立ち上げ時 から数百以上の宿泊施設にウェブ販売をアドバイス。アパートメントタイプから、ビジネス・リゾートホテル、グローバルチェーンまで幅広いタイプの宿泊施設の販促をサポート。
現在は沖縄県を中心に200室以上の宿をサポート中。
OTAの裏事情まで熟知したノウハウでホテル・民泊のウェブ集客をお手伝いします。





