最終更新日:2026年9月24日
「お名前のスペルをいただけますか?」──ホテルの予約や問い合わせの電話で、英語のつづりや予約番号を口で伝えるのは意外と難しいものです。「B」と言ったのに「D」と書かれていた、という経験がある方も多いのではないでしょうか。
そんなときに役立つのが、アルファベット1文字ずつを決まった単語に置き換えて伝える「フォネティックコード」です。その古い形が、この記事のテーマである「エイブル・ベーカー・チャーリー」です。
この記事では、エイブルベーカーチャーリーの意味と歴史、A〜Zの一覧(現在主流のNATO式との対照表つき)、電話で名前や予約番号を正確に伝えるコツまでをまとめました。
この記事でわかること
✔エイブルベーカーチャーリーの意味と、いつ・どこで使われていたか
✔A〜Zの正式な単語と、現在の標準「アルファ・ブラボー・チャーリー」との違い
✔聞き間違えやすい文字と、電話で名前・予約番号を伝えるときの言い方
✔数字の伝え方(ナイナーなど)と、覚え方のコツ
エイブルベーカーチャーリーとは
POINT
A=Able、B=Baker、C=Charlie…と、アルファベットを単語に置き換えて伝える、第二次世界大戦期のアメリカ軍の通話表です。
エイブルベーカーチャーリー(Able Baker Charlie)は、アルファベットを聞き間違えないように、1文字ずつを決まった英単語に置き換えて伝える方法です。「エーブルベーカー」「エイブル・ベーカー」と表記されることもあります。こうした仕組みを「フォネティックコード」(phonetic alphabet/通話表)と呼びます。
たとえば「B」は、電話や無線では「D」「E」「G」「P」「V」などと混ざりがちです。そこで「B」の代わりに「Baker(ベーカー)」と言えば、ほかの文字と取り違えることはまずありません。
ただし、エイブルベーカー式は1950年代に役目を終えた古い方式です。現在、航空・無線・コールセンターなどで世界的に使われているのは、「アルファ・ブラボー・チャーリー」で始まるNATOフォネティックコード(ICAO式とも呼ばれる)です。
歴史:Able Baker から NATO(アルファブラボー)へ
POINT
1941年に米陸海軍が採用し、1956年にNATO・ICAO共通の「アルファ・ブラボー」式へ置き換えられました。
第一次世界大戦が起源と紹介されることもありますが、エイブルベーカー式が正式に定められたのは第二次世界大戦中のことです。流れを年表で整理すると、次のとおりです。
エイブルベーカー式は英語話者には覚えやすい一方、フランス語やスペイン語などを話す人には発音しにくい単語が含まれていました。そこで、国際的に通じる単語に選び直されたのが現在のNATO式です。
「エイブル・ベーカー・チャーリー」という言い回しは、第二次世界大戦を描いた映画やドラマ、年配の世代の会話などで今も耳にすることがあります。意味は通じますが、これから覚えるなら現行のNATO式がおすすめです。
出典(2026年9月確認):Wikipedia英語版「Allied military phonetic spelling alphabets」/Wikipedia英語版「NATO phonetic alphabet」。
エイブルベーカーチャーリーの続き:A〜Z一覧表
POINT
C(Charlie)・M(Mike)・V(Victor)・X(X-ray)の4つは、エイブルベーカー式とNATO式で同じ単語です。
「チャーリー」の続き、D以降も含めたA〜Zの一覧です。左がエイブルベーカー式(1943年以降の米英共通版)、中央が現在の標準のNATO式、右は日本人同士で使いやすい言い換えの一例です。
| エイブル ベーカー式 |
NATO式 (現行) |
日本語での 言い換え例 |
|
|---|---|---|---|
| A | Ableエイブル | Alfaアルファ | アメリカ |
| B | Bakerベーカー | Bravoブラボー | ボストン |
| C | Charlieチャーリー | Charlieチャーリー | シカゴ |
| D | Dogドッグ | Deltaデルタ | デンマーク |
| E | Easyイージー | Echoエコー | イングランド |
| F | Foxフォックス | Foxtrotフォックストロット | フランス |
| G | Georgeジョージ | Golfゴルフ | ゴルフ |
| H | Howハウ | Hotelホテル | ホテル |
| I | Itemアイテム | Indiaインディア | イタリア |
| J | Jigジグ | Juliettジュリエット | ジャパン |
| K | Kingキング | Kiloキロ | キング |
| L | Loveラブ | Limaリマ | ロンドン |
| M | Mikeマイク | Mikeマイク | マイク |
| N | Nanナン | Novemberノベンバー | ニューヨーク |
| O | Oboeオーボエ | Oscarオスカー | オーサカ |
| P | Peterピーター | Papaパパ | パリ |
| Q | Queenクイーン | Quebecケベック | クイーン |
| R | Rogerロジャー | Romeoロメオ | ローマ |
| S | Sugarシュガー | Sierraシエラ | スペイン |
| T | Tareテア | Tangoタンゴ | トーキョー |
| U | Uncleアンクル | Uniformユニフォーム | ユニフォーム |
| V | Victorビクター | Victorビクター | ビクトリー |
| W | Williamウィリアム | Whiskeyウィスキー | ワシントン |
| X | X-rayエックスレイ | X-rayエックスレイ | エックスレイ |
| Y | Yokeヨーク | Yankeeヤンキー | ヨコハマ |
| Z | Zebraゼブラ | Zuluズールー | ゼブラ |
※NATO式の正式なつづりは Alfa(Alpha ではない)、Juliett(t が2つ)です。どちらも英語以外の話者が読み間違えないための表記です。エイブルベーカー式の S は、1941年の制定時は Sail、1943年以降は Sugar です。
※右列の言い換えは決まった規格ではなく、日本国内でよく使われる地名や単語の一例です。
■「伝われば何でもいい」は半分正解
「意味が伝われば、どんな単語を使っても構わない」という考え方もあります。聞き間違いを防ぐという目的から見れば、これは一理あります。
ただし原則は、相手と同じ表を使うことです。航空や無線の世界では決められた単語以外は使いません。海外のホテルや航空会社のスタッフなら、NATO式で伝えるのがいちばん確実です。一方、相手がNATO式を知らなさそうなときは、「パリのP」「トーキョーのT」のように誰でも知っている単語に言い換えるのが親切です。
どんな場面で使う?
POINT
いちばん身近なのは、ホテルや航空券の予約で、名前・予約番号・メールアドレスを電話で伝える場面です。
特に海外のホテルや航空会社に電話するときは、日本人の名前が相手にとって聞き慣れない音なので、1文字ずつ区切って伝えるのが確実です。たとえば「MATSUDA」なら、次のように伝えます。
伝え方の例(名前)
My last name is Matsuda. M as in Mike, A as in Alfa, T as in Tango, S as in Sierra, U as in Uniform, D as in Delta, A as in Alfa.
(マツダです。マイクのM、アルファのA、タンゴのT、シエラのS、ユニフォームのU、デルタのD、アルファのA)
外国人ゲストを迎える宿の方は、電話やメッセージでの英語対応の基本フレーズもあわせて押さえておくと安心です。→ 民泊で使える英語表現!ゲスト対応時の参考に!
聞き間違えやすい文字と伝え方のコツ
POINT
迷ったら「B as in Bravo(ブラボーのB)」の形で、文字と単語をセットで言うのが基本です。
■特に聞き間違えやすい文字の組み合わせ
■英語での言い方
よく使うフレーズ
B as in Bravo.(ブラボーのBです)
B for Bravo.(イギリス英語ではこちらもよく使われます)
Is that B as in Bravo, or D as in Delta?(ブラボーのBですか、デルタのDですか?)
Could you spell that, please?(つづりを教えていただけますか?)
自分から伝えるときは、文字→単語の順で、ひと文字ずつ区切るのがコツです。聞き取る側のときは、1文字ずつメモしてから最後にまとめて読み返し、相手に確認してもらうと確実です。
■数字の伝え方(ナイナーなど)
数字は1桁ずつ読むのが基本です。たとえば予約番号「1590」なら、「fifteen ninety」ではなく「one, five, nine, zero」と区切ります。fifteen(15)と fifty(50)のように、まとめて読むと聞き間違えやすい数字があるためです。
航空無線などでは、ICAOがさらに聞き間違えにくい読み方を決めています。
| 数字 | ICAOの表記 | 読み方 |
|---|---|---|
| 0 | ZE-RO | ゼロ |
| 1 | WUN | ワン |
| 2 | TOO | ツー |
| 3 | TREE | ツリー |
| 4 | FOW-ER | フォウァ |
| 5 | FIFE | ファイフ |
| 6 | SIX | シックス |
| 7 | SEV-EN | セブン |
| 8 | AIT | エイト |
| 9 | NIN-ER | ナイナー |
「9」をナイナーと読むのは、ドイツ語の nein(ナイン=いいえ)と区別するため、「5」をファイフと読むのは fire(火事・撃て)と区別するため、「3」をツリーと読むのは th の音が苦手な話者でも正しく発音できるようにするためとされています。
ホテルの予約など日常の電話では、ここまで厳密にする必要はありません。1桁ずつ区切り、最後に「one-five-nine-zero, correct?」と読み返すだけで、間違いは大きく減ります。
■日本語にも同じ仕組みがある(和文通話表)
日本語にも、無線局運用規則で定められた「和文通話表」があります。「朝日のア」「いろはのイ」「上野のウ」のように、かな1文字を決まった単語で伝える方法です。電報の申し込みなどで耳にしたことがある方もいるでしょう。
出典(2026年9月確認):Wikipedia英語版「NATO phonetic alphabet」(数字の読みとその理由)/みんなの知識 ちょっと便利帳「和文通話表」。
覚え方・練習法
POINT
26個を丸暗記するより、「自分の名前」と「よく使う文字」から覚えるのが近道です。
すぐにできる練習法
✔自分の名前(ローマ字)をNATO式で言えるようにする。まずはこれだけで電話の場面の大半に対応できる
✔家族や勤務先、住んでいる地名のつづりも同じように言ってみる
✔街で見かける車のナンバーの英字や看板の略語を、頭の中でNATO式に変換してみる
✔C・M・V・X の4つはエイブルベーカー式と共通。残りを「アルファ・ブラボー…」と歌うように通しで声に出す
✔スマホのメモや名刺入れに一覧表を入れておき、電話のときに見ながら使う
実際に使う場面では、完璧に覚えていなくても表を見ながらで構いません。大切なのは「文字と単語をセットで伝える」習慣をつけることです。
つづりは「B as in Bravo」で1文字ずつ伝える。
よくある質問
エイブルベーカーチャーリーとアルファブラボーチャーリーの違いは何ですか?
どちらもアルファベットを単語に置き換えて伝えるフォネティックコードです。エイブルベーカー(Able, Baker, Charlie…)は1941年に米陸海軍が採用した第二次世界大戦期の方式で、アルファブラボー(Alfa, Bravo, Charlie…)は1956年から使われている現在のNATO/ICAO式です。
エイブルベーカーチャーリーは今でも使われていますか?
公式にはほとんど使われていません。米軍やICAOは1956年に現在のNATO式へ切り替えました。映画や年配の世代の会話などで耳にすることはありますが、これから覚えるならNATO式がおすすめです。
エイブルベーカーチャーリーのD以降の続きを教えてください。
Dog, Easy, Fox, George, How, Item, Jig, King, Love, Mike, Nan, Oboe, Peter, Queen, Roger, Sugar, Tare, Uncle, Victor, William, X-ray, Yoke, Zebra と続きます。Sは1941年の制定時は Sail で、1943年以降に Sugar に変わりました。
電話で英語のスペルを伝えるときは、どう言えばよいですか?
「B as in Bravo(ブラボーのB)」のように、文字と単語をセットで1文字ずつ伝えるのが基本です。イギリス英語では「B for Bravo」もよく使われます。最後に全体を読み返して相手に確認してもらうと確実です。
数字の9をナイナーと読むのはなぜですか?
無線などで、ドイツ語の nein(ナイン=いいえ)と聞き間違えないようにするためです。ICAOは同じように、3をツリー、4をフォウァ、5をファイフと読むことも定めています。日常の電話では、数字を1桁ずつ区切って読むだけでも十分に効果があります。
相手と違う単語を使っても問題ありませんか?
聞き間違いを防げれば実害はありませんが、原則は相手と同じ表を使うことです。海外のホテルや航空会社にはNATO式が最も確実に通じます。相手がNATO式を知らない場合は「パリのP」のように誰でも知っている単語に言い換えると親切です。
日本語にも同じような仕組みはありますか?
あります。無線局運用規則で定められた「和文通話表」で、「朝日のア」「いろはのイ」「上野のウ」のように、かな1文字を決まった単語で伝えます。
まとめ
この記事のポイント
✔エイブルベーカーチャーリーは、1941年に米陸海軍が採用したアルファベットの通話表
✔1956年に現在のNATO/ICAO式(アルファ・ブラボー・チャーリー)へ置き換えられた
✔D以降は Dog, Easy, Fox…と続き、Jig・Nan・Oboe・Tare・William・Yoke など今は使わない単語も多い
✔電話では「B as in Bravo」のように文字と単語をセットで伝え、数字は1桁ずつ区切る
✔原則は相手と同じ表。通じなければ誰でも知っている単語に言い換える
ホテルの予約や海外への問い合わせで名前を伝えるとき、この記事の一覧表を手元に置いておけば、聞き間違いによるトラブルをぐっと減らせます。まずは自分の名前を、NATO式で言えるようにしてみてください。
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