公開日: 2023年11月6日
最終更新日 : 2023年11月7日
Booking.comの未払い問題以降、Bookingは倒産するのかと心配するホテル、民泊オーナーが増えています。結論からいうと全く心配する経営状態ではありません。論より証拠、という事で先日発表されたばかりの夏(Q3 7月〜9月)の業績を深掘りしていきます。財務諸表を紹介するだけでは、単体だと良いのか悪いのかよくわからないしドル表記なので余計にわからない!数字の羅列で意味不明!という方も多いでしょう。そこで本日はBooking.comの比較対象として、みなさんもよく利用するAirbnbの業績もご紹介。日本円に換算した上でグラフで視覚的にわかりやすく比較してみます!
比較企業
外資最大手のBooking.comとAirbnbを比較しています。Expedia Groupe(Expedia、Hotels.com等)も調べてみたのですが、両社に比べ見劣りするのと、集客的に利用している施設もBooking.comとAirbnbに比べ少ないかと思いましたので今回は各項目で参考程度にご紹介しています。
また、わかりやすくする為に楽天グループの数字も一部ご紹介します。
楽天トラベル単体での業績発表が無い為、楽天グループ全体の数字になる点と、楽天グループは第三四半期(Q3)の数値発表がまだの為、2023年第二四半期(Q2)の数字を記載しています。
尚、Booking.comと表記していますが、実際にはAgoda等も含むBooking Holdings の数字となります
注釈が無い限りは全てQ3 (第3四半期=7月〜9月)の指標となっています。年間の業績ではありません。
金額はわかりやすくする為に$1=¥150で計算し、億円単位で表記しています。
売上(Revenue)
両社のQ3の売上を昨年と今年両方をグラフにしてみました。
Bookingは1兆円超え Airbnbも5,000億円とかなりの規模であるのがわかります。(四半期のみです)
Bookingが倍ほどありますが、Booking Holdingsでの数字ですので、Booking.com単体だとAirbnbと近い数字になっているものと推測されます。
参考までに、楽天グループ全体の2023年のQ2の売上は4,972億円でした。
楽天トラベル単体での売上は開示されていません。
Expedia Groupはの2023年Q3は5,894億円でした。
売上伸び率 2022年Q3→2023Q3
2022年→2023年の売上の伸び率は両社拮抗していてどちらも約120%となっています。
これだけの規模にも関わらず20%も成長するのは驚異的です
参考
2022年→2023年 伸び率
Expedia(Q3) →108.57%
楽天グループ全体(Q2)→109.71%
純利益(Net Income)
純利益はQ3の3ヶ月でBooking3,700億円 Airbnb2,400億円
Airbnbは発表では$4,374M(=6,561億円)となっており昨年より大幅に増加していますが、注釈に
「第3四半期純利益 には、一時的な法人所得税法上の優遇措置 特定の繰延税金資産に対する評価性引当金 2.8Billionが含まれる」
とありますので、これを引いた額は1.6 billion(=2,400億円)でグラフを作成していますこちらの方が業績を正確に表しています。
Airbnb Q3 2023 Shareholder Letterより
2023年純利益
Expedia Group(Q3)→638億円
楽天グループ(Q2)→マイナス1,370億円
楽天グループがマイナスになっているのは、楽天モバイルへの大型投資が先行している為の赤字なので比較できるものではありません。あまり参考にならないでしょう
純利益伸び率 2022年Q3→2023Q3
一時的な法人所得税法上の優遇措置を除いた純利益の昨年からの伸び率では、Bookingが若干上回っていました。
参考
2021年 → 2022年の伸び率
2022年Q3→2023年Q3 伸び率
Expedia(Q3) → 88.17% (昨年よりマイナス)
楽天グループ(Q2)→ -1,794億→ -1,370億 赤字幅は減少
資金力(Free Cash Flow)
フリーキャッシュフロー=自由に使える現金はQ3終了時点でBookingが8,600億円 Airbnbが2,000億円弱という結果でした。
参考までに日本国内のフリーキャッシュフローのランキングもご紹介
順位 | 会社名 | フリーキャッシュフロー |
1 | みずほフィナンシャルグループ | 15兆4729億円 |
2 | 三井住友トラスト・ホールディングス | 3兆5764億円 |
3 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 2兆7566億円 |
4 | ゆうちょ銀行 | 1兆8416億円 |
5 | 本田技研工業 | 1兆4509億円 |
6 | トヨタ自動車 | 1兆3561億円 |
7 | 京葉銀行 | 1兆2125億円 |
8 | 十六フィナンシャルグループ | 1兆2068億円 |
9 | 日本郵政 | 1兆2009億円 |
10 | ソフトバンク | 1兆9億円 |
11 | 日立製作所 | 9781億800万円 |
12 | コンコルディア・フィナンシャルグループ | 8174億9400万円 |
13 | 日産自動車 | 7740億1000万円 |
14 | 中国銀行 | 7612億2200万円 |
15 | 信越化学工業 | 6015億2500万円 |
Strainer 日本市場 – フリーキャッシュフロー ランキング
Bookingは日本だと日立製作所の次、第12位にランクインする資金力です。
潤沢ですね。Booking.comの未払い問題が経営悪化によるものでないのはここからも見て取れます。
参考
Expedia → マイナス2,382億円
純資産(Net Asset)
3.8兆と2.4兆 額が大きすぎて、もはやよくわかりません。。。
日本トップのトヨタが29兆円
3.8兆は日本でいうとJR東海やパナソニックと同等
2.4兆はNTTデータや大和ハウスと同等
Expediaは3.3兆円
といえば少しわかりやすいでしょうか。
負債 (Total liabilities)
負債額はBookingが約4兆円 Airbnbが1.8兆円となっています。売上等もBookingがAirbnbの2倍程度ですので、負債も同程度の開きとなっています。
Expedia Groupe →1.88兆円
楽天グループ→2兆4,757億円
20兆?? 読み間違い???
負債というとなんだか危ない印象を持ってしまいますが、ビジネスにおいてはそうではありません。信用を担保に、ある程度借り入れを起こしてビジネスを大きくする方が良いとされています。
逆に無借金経営は、信用が無いか、借り入れでレバレッジを効かせてビジネスを拡大するチャンスを逃している可能性もあるのです。(業種による)
一般的には
負債比率=( 負債 ÷ 純資産(自己資本)) × 100
が100%以下なら安全性が高いと言われます。
負債比率 | 財務の安全性 |
負債比率100%以下 | 自己資本によって負債すべてを返済可能な状態であるため、返済余力に問題なく優良な水準 |
負債比率101~300% | 無理のない返済計画を立てられる、比較的経営が安定している水準 |
負債比率301~600% | すぐに問題が起きるほどではないが、経営上の改善が必要な水準 |
負債比率601~900% | 返済が滞る可能性があるため、早急に改善が必要な水準 |
負債比率901%以上 | 負債比率900%を超えると、倒産する可能性が高まる |
参考 社長の教科書
負債比率は
- Booking →102.44%
- Airbnb →76.79%
- Expedia Group →55.77%
- 楽天グループ→94.58%
両社共に全く問題無いレベルです。ここからも昨今のBooking未払い問題が経営不振に起因するものでないのが見て取れます。
泊数(Room Nights)
宿泊ですので、どのくらいの部屋を売ったのかも発表されていますのでみてみます
ここでも業績通りBookingがAirbnbの倍以上という結果になりました。
繰り返しますが、BookingはBooking.comとAgodaを合わせた数字になりますので単体の場合もう少し低くなります。
内訳は開示されていません。
Expedia Group → 81.6万泊
まとめ
- Booking HoldingsはAirbnbの約倍の規模
- OTA単体で見るとそこまでの開きはない
- OTAで分けると Booking.com > Airbnb > Agoda (推測)
- 両社共に昨年よりも成長
- 資産、資金共に両社問題無いレベル
昨今のブッキングドットコム未払い問題でブッキングの経営不振を心配してブッキングの予約比率を下げたり、Airbnbや国内OTAに注力したりする動きがありますが、このような財務諸表を見ればブッキング社が経営不振では無いのは一目瞭然です。
今後はインバウンドが激増するのは間違いないので、インバウンド集客力の高い ブッキングドットコムに注力するという戦略が理にかなっているのではないでしょうか。
参考
Booking Holdings
https://ir.bookingholdings.com/financials/quarterly-results/default.aspx
Airbnb
https://investors.airbnb.com/home/default.aspx
楽天
https://corp.rakuten.co.jp/investors/documents/results/
Expedia
https://www.expediagroup.com/investors/financial-information/quarterly-results/default.aspx
元Booking.com アカウントマネージャー。数百以上の宿泊施設にウェブ販売をアドバイス。アパートメントタイプから、ビジネス・リゾートホテル、グローバルチェーンまで幅広いタイプの宿泊施設の販促をサポート。OTAの裏事情まで熟知したノウハウでホテル・民泊のウェブ集客をお手伝いします。
「ブッキングドットコムは倒産するのか?? 最新の財務諸表から読み解く経営力!わかりやすくする為にAirbnbと比較!【2023年Q3】」への1件のフィードバック
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