公開日: 2023年10月23日
最終更新日 : 2023年10月31日
今年の夏の訪日外国人消費者動向が発表されました。最新のデータを検証する事で今後の宿の運営にに役にたちます。そこで本日はインバウンドの消費者動向を宿泊関連に絞って分析、ご紹介していきます。
国別消費額
まずはトータルのインバウンドの消費額から。右が今年、左下がコロナ前の2019年のデータです。
これは宿泊費以外の移動、飲食、土産物等も含んだ総額のデータとなっています。
参照
訪日外国人消費動向調査2023年7-9月期(1次速報)について
コロナ前と比較して総額で1兆1,818億→1兆3,904億となり、17.7%の増加です。
2019年は青の中国が4割を占めていたのに対し、2023年はきれいにバラけてきていますね。
但し、引き続き、中国、台湾、韓国、香港のアジア圏が多いのがわかります。
報道のインタビューを見ていると欧米人へのインタビューが多い為、欧米からのインバウンドが多い印象を受けますが、全体からすると欧米系はわずか。殆どがアジア、特に中華圏となっています。
欧米人だとなんか「インバウンド!」って感じがするのでメディア側が意図的に欧米人にインタビューしているのでしょう。
宿泊費
我々宿泊業に関わる者からすると、飲食や土産物等に使った金額よりも、宿にいくら使っているのかが気になるところ。そこで旅行総額の次は、宿泊費に絞ってみてみます。
全地域宿泊費 2019年比
2019 | 2023 | 伸び率 |
3,608億 | 4,754億 | 131.76% |
総額が17.7%増なのに対し、宿泊費は31.8%も伸びています
地域別宿泊費割合
宿泊費における国別割合もみてみます。
参照
訪日外国人消費動向調査2023年7-9月期(1次速報)について
宿泊だけを見ても、アジア圏が半分を超えてきます。ボリュームが非常に大きい為、無視できません。
欧米系は数が少ない事もあり、ボリュームという点では僅かになります。
米の割合が高い為、欧だけでみるとかなり限られるのが見て取れます。
国別一人あたり宿泊費
今度は一人あたりの宿泊費額を国別で見てみます
参照
訪日外国人消費動向調査2023年7-9月期(1次速報)について
こうやってみると欧米系がアジアの倍くらいありますが、欧米系はアジア圏に比べ長期滞在傾向がある為、その分宿泊費も高額になります。
単純に欧米だからアジアの倍の料金のホテルに宿泊するというものではありませんのでご注意ください。
1人1泊あたり宿泊費
長期滞在すると総額が増えるのは当たり前なので、今度は1人あたり宿泊費を国別の平均泊数で割った国別1人1泊あたりの金額も算出してみました。
泊数は最新のデータがみつからなかった為、2019年のこちらのデータを参照しています。
参照
泊数は欧米がアジアのおよそ倍という傾向があります。
フィリピン、ベトナムが異常に長いのは何かしらの理由があるかと思われますが、訪日観光客という意味でいうと数が非常に少ない為、あまり気にしなくてもいいでしょう。
下記が一人あたり宿泊費を泊数で割ったグラフになります。
インドネシア、フィリピン、ベトナム、インドあたりが低いのを除けば、アジアと欧米ではそこまで大差がありません。
シンガポールは英国、イタリアと同じ位の単価の宿に宿泊している傾向が見て取れます。
香港、中国もドイツ、フランスよりも高くなっています。
※宿泊費は2023年、泊数は2019年データの為、実際とは異なる可能性があります
ざっくりとした傾向としては
欧米は
- 連泊が多い
- 長い宿泊の為、一人あたりの宿泊費総額が高い
- 訪日客数は少ない
アジアは
- 連泊が少ない
- 短い宿泊の為、宿泊費総額が低い
- 訪日客数は非常に大きい
両者で1人1泊あたりの単価は思っているほど大差無い
欧米が高単価というのは単に長い宿泊だからであって、欧米人は1泊あたりの料金が高くても予約が入るという認識は誤りであるのがデータから見て取れます。以前とは少し異なる傾向のようです。
とはいえ、連泊が多いと清掃も不要になり経営効率化が図れる為、欧米系の長期滞在は宿オーナーにとっては嬉しいお客様であることに変わりはありません
※2019年時点では欧米豪が高いという調査もあります。
訪日外国人(観光・レジャー目的)の宿泊費上位15%の旅行者に関する詳細分析
まとめ
- 訪日外国人消費総額はコロナ前の約18%増
- 訪日外国人宿泊総額はコロナ前の約32%増
- 宿泊総額はアジアが約60% 欧16% 米13%
- 連泊数は欧米はアジアの2倍程度
- 1人1泊あたり単価はアジアと欧米で大きく変わらない
欧米系は訪日客数は少ないけど連泊が多く当たれば大きい
アジア系は泊数は少ないけど、訪日客数が多く安定している
といったところでしょうか。
以上を参考に今後の集客に活かしてみてください。
ご紹介したのはあくまでも全体的な傾向ですので、地域によって異なるかと思います。
データを参考にして、実際の肌感というものも大切にしてください。
参考資料
訪日外国人消費動向調査2019年7-9月期(1次速報)について
訪日外国人消費動向調査2023年7-9月期(1次速報)について
元Booking.com アカウントマネージャー。数百以上の宿泊施設にウェブ販売をアドバイス。アパートメントタイプから、ビジネス・リゾートホテル、グローバルチェーンまで幅広いタイプの宿泊施設の販促をサポート。OTAの裏事情まで熟知したノウハウでホテル・民泊のウェブ集客をお手伝いします。