最終更新日:2026年9月30日
ChatGPTにホテルの電話対応をさせてみたところ、思いのほかしっかり対応してくれたので、実例をご紹介します。
2026年9月10日、ChatGPTの開発元であるOpenAIから、会話に特化した「GPT-Live-1」というモデルのAPIが公開されました。双方向の会話が得意なモデルで、普通に人と話しているのと変わらないレベルです。
「これはホテルの電話対応に使えるかも!」と思い、実際に電話回線にAPIを組み込んで実装してみました。
通話デモ|実際の電話回線でAIが応対
百聞は一聴にしかず? まずはデモをお聞きください。実際に開通している電話回線でのデモです。会話に対するレスポンスの速さに注目してください。
いかがでしょうか。若干AIっぽさは残りますが、レスポンスの速さは普通の会話と変わりません。
少し独特のなまりがあるおかげで、逆にAI感をごまかせている気もします(笑)
AI電話でできること

■調べる時間ゼロで即回答
ホテルの情報を学習しているので、調べる時間ゼロで即回答してくれます。新人スタッフだとその都度カンペを確認するためAIより時間がかかりますが、AIは即答です。
学習しているのは、普段使っている、こんな感じの情報が散らかったスプレッドシートです↓


タップすると全体を大きく表示します
■多言語に対応
さらにAIなので、多言語に対応しています。日英だけでなく、中国語、韓国語、ヨーロッパの主要言語まで何でも来いです。
■ホテルごとに、細かい内容まで回答
弊社では複数のホテルをサポートしていますが、ホテルごとに対応できます。
設備やアメニティの有無だけでなく、Googleスプレッドシートに記載してあるQ&Aも読み込んでいるので、細かい内容にも回答します。同じスプレッドシートは、メールの問い合わせへのAI自動返信にも使っています。
予約管理システム(PMS)との連携

質問への回答だけでなく、AirHost(エアホスト)などのPMSと連携させて予約照会もできます(PMSについては民泊の管理部屋数別オススメシステム3選で紹介しています)。例えば、以下のようなことも実装しています。
📞 実装している機能の例
- ✔実際のゲストにだけ案内してよい内容(オートロックの解錠番号など)は、予約を確認してから案内
- ✔予約カレンダーを照会して、空室状況を回答
- ✔オーナーの電話番号を登録しておき、オーナーからの問い合わせであれば予約情報をお伝えする
やろうと思えば、サイトコントローラーに登録してある料金などの案内も可能です。ただ、案内を誤ると怖いので、料金関連は公式サイトのリンクをSMS(ショートメッセージ)で送り、確認してもらうようにしています。
ついでに、ホテルの情報を学習させたスマホ版のチャットボットのリンクも送り、簡単なホテルの情報はチャットで自動回答しています。
また、会話の内容からすぐに人間が対応した方がよい場合は、スタッフに転送します。折り返しにした方がよい場合は、ゲストの要望を承って、折り返しとしてスタッフに通知することも可能です。
実装方法など、さらに詳しい内容は次の章でご紹介します。
実装方法|会話担当と裏方、2つのAIの二段構え

■会話はGPT-Live、裏方はGPT-5.6 Terra
実装は結構複雑です。電話対応をするのはGPT-Liveですが、裏で動くモデルにはGPT-5.6 Terraを割り当てています。
GPT-Liveが会話しながら、裏では賢いTerraが調べ物や推論をして、回答内容を組み立てるという構成です。
■ホテルを確定してから、そのホテルの情報だけを渡す
さらに、ホテル情報の受け渡しには、裏でGAS(Google Apps Script)も走らせています。
弊社では複数のホテルをサポートしているため、AIにすべてのホテルの情報を渡してしまうと、別のホテルの情報を案内してしまうおそれがあります。そこで、次のような流れにしています。
- 1冒頭でホテル名を聞き、まずホテルを確定させる
- 2その裏で、そのホテルの情報だけをAIに渡す
- 3渡された情報をもとに、AIが回答する
こうすることで、誤って別のホテルの情報を案内してしまう間違いを根本から防いでいます。
■裏方にTerraを採用した理由
GPT-5.6には、安価版の「Luna」、中間の「Terra」、上位版の「Sol」の3種類があり、賢さ・速さ・費用のバランスがそれぞれ違います。裏方にTerraを採用したのにも理由があります。
×Luna(安価版)
かなりの確率で誤った回答をしてしまうことがあるため、採用を見送り。
△Sol(上位版)
費用が高いうえに賢すぎて考える時間が長くなり、電話口での応答に若干の時差が出てうまくいかなかった。
◎Terra(採用)
速度も申し分なく、回答の精度もほぼ完璧。
■AI以外の準備と、実装後の地道な調整
AI周り以外でも、AI専用の電話番号の取得、専用サーバーの確保、回線を安定させるための専用トンネル、ドメインの取得などが必要で、サクッとお試しでできるものではありません。
また、大変なのは実装できた後です。漢字の読み方や微妙な言い回しなど、細々とした修正は挙げ出したらキリがありません。私自身、数百回のテストコールをして細かい修正を重ね、ようやく様になってきたかなという感じです。
費用|月500件の着信で約18,400円

実際に利用しているシステムやAPIの大まかな費用は、以下のとおりです。
| 初期費用 | |
| 専用サーバー(使い古しの中古PCを利用) | 無料 |
| 固定費(月額) | |
| 電話回線×2 | 1,500円 |
| 回線安定用の専用ドメイン | 150円 |
| 固定費 小計 | 1,650円 |
| 変動費(月額・着信500回を想定) | |
| GPT-Live-1(会話担当) | 7,500円 |
| GPT-5.6 Terra(裏方担当) | 4,500円 |
| GPT-5.4 mini(通話の書き起こし) | 250円 |
| 着信料 | 1,500円 |
| 音声→AIサーバー費用 | 700円 |
| 転送 | 2,000円 |
| SMS(予約ページ・チャットボットのリンク) | 300円 |
| 変動費 小計 | 16,750円 |
| 月額合計 | 18,400円 |
月500件というのは、弊社が約200室をサポートしている前提での、通常月の一般的な受電件数です。1日あたりにすると17回程度の電話を処理した場合です。
繁忙期になると、倍の月1,000件(1日34回)ほどになります。その場合、通話料などの変動費がこの約2倍になります。
■外部のAI電話サービスに委託する場合
ここまでは、弊社のように自作した場合の費用です。AI電話は自作しなくても、外部の専門サービスに委託して導入することもできます。
同じ月500件の着信で、多言語対応と予約管理システム(PMS)との連携まで含めた場合の費用感を比べると、次のようになります。
| 月500件 | 自作 (弊社) |
外部に委託 (一例) |
|---|---|---|
| 初期費用 | なし(中古PCを利用) | 10万円前後 |
| 基本料金 | 約1,650円 (電話番号・ドメイン) |
月1万円前後 (月100件程度まで) |
| 通話料 | 約14,750円 (AI・回線の従量課金) |
月2〜3万円程度 (超過分) |
| 転送料 | 約2,000円 | 月1,000〜2,000円程度 |
| 多言語対応 | 追加料金なし | オプション (月1万円前後) |
| PMS連携 | 追加料金なし (AirHostと連携) |
オプション (月3万円前後) |
| 月額の合計 多言語+ PMS込み |
約18,400円 | 約7〜8万円 |
| 1件あたり | 約37円 | 約150円前後 |
※外部サービスの金額は、ある事業者の公開料金をもとにした目安です(税別・数字は丸めています)。オプションの組み合わせによって変わります。自作側はドル建ての従量料金を1ドル150円で換算した目安で、開発・保守の手間は含んでいません。
🏨 施設や客室が増えた場合
- ✔外部委託:ホテルが1施設増えると、初期費用10万円前後と月額7〜8万円が、もう1施設分かかる形になります
- ✔自作:弊社の場合、サポートする客室が今の約200室から倍の400室になっても、2倍になるのは通話料と転送料だけです。月額の合計は約3.5万円(約1.7万円の追加)で済みます
⚖️ 自作と外部委託、どちらを選ぶか
- ✔外部委託:開発の必要がなく、すぐに始められる。保守やサポートも任せられる
- ✔自作:開発や調整の手間はかかるが、月々の費用を大きく抑えられる。PMS連携や案内内容も自社に合わせて作り込める
手間をかけずに始めたいなら外部委託、費用を抑えて自社に合わせて作り込みたいなら自作と、目的に合わせて選ぶのがよいと思います。
💰 電話代行サービスと比べると
仮に電話代行サービスを利用すると、用件を取り次ぐだけで月額数万円かかります。しかも日本語のみで、必ず折り返し対応が必要になります。
AI対応であれば、多言語で、あらゆる案内を自動で回答し、折り返しを不要にできます。
実際に使えるのか?

簡単な質問であれば、ある程度使えるレベルにはなってきましたが、実際に弊社でこのAI電話を導入するかどうかは、まだ未定です。今後しばらく、ゲストに影響の出ない時間帯でテストをして、導入を検討したいと思います。
導入できたとしても、AI電話に完全に任せきりにすることはありません。人間が24時間すぐに対応できる体制は整えているので、誰でもできる簡単な案内はAIに任せ、人間にしか対応できないイレギュラーな対応に時間を使えるよう、体制を整えたいと思います。
つまり、電話対応の半分はAIに任せられるということです。その分、人間のスタッフはより難しい対応に集中できるようになりそうです。
Geminiにしなかった理由

GoogleのGeminiにも、会話特化型の「Gemini 3.8 Live」というモデルがあります。
実はGeminiの方が、ChatGPTのような変ななまりがなく、きれいな日本語を話すうえに、レスポンスもChatGPTより速いです。聞かれたことにスパッと簡潔に答えてくれるので、回答としては問題ありません。費用もChatGPTの3分の1程度です。
ただ、ChatGPTが大きく上回っているのが「双方向性」です。
◎ChatGPT(GPT-Live)
聞きながら話すことができるので、人間と普通に話しているような感覚で会話が成り立つ。
△Gemini
こちらが話し出すと、AIは話すのを完全に止めて、聞くことに徹する癖がある。
Geminiのやり方でも会話できなくはないのですが、なんとなく違和感があり、いかにも機械と話しているような感覚になるのです。
さらにGeminiには、話している途中で、ときどき謎のアジア圏の言語を話し出す癖もありました。ゲストからの電話でこれが起きると困ってしまいます。
両方で何度もテストした結果、電話口での会話にはGPT-Liveの方が適していると判断し、こちらを採用しました。
とはいえ、1か月もすればAI業界は様変わりしているので、今後より良いモデルが出てくれば、すぐに切り替えていきたいと思います。
声の変更も可能

あらかじめ用意されている7種類の声から選べます。男性の声も用意されています。
一般的に、電話やアナウンスでは女性の声の方が周波数帯的に聞き取りやすいとされているそうなので、今回は女性の声に設定しています。
クレーマーには、低い男性の声で対応するのもいいかもしれませんね。
まとめ|ここまで進化しているAI
現時点ではまだ使えそうにないと思った方も、半年後にはその考えが変わっているかもしれないのがAI業界です。
流れに取り残されないよう、宿泊業×AIでお宿様をサポートしていきたいと思います。
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